うつ病診断の驚くべき実態。「診断書は電話で話しただけで書きました」
「あたなは“うつ”ではありません」産業医の警告2
【患者さんの言いなりになる精神科医】
もちろん、精神科医の中には、田中さんのようなケースをうつ病だと診断しない人もいます。
しかし、個人的な経験から言わせてもらえれば、そのような良心的な精神科医はほんの一握りです。田中さんがその気になれば、自分をうつ病だと診断してくれる精神科医をすぐに見つけることができます。
実は田中さんのエピソードには、まだ続きがあります。
面談を拒絶するようになった田中さんに対し、私は「このままだと会社から解雇されてしまいますよ」とメールでアドバイスしました。実際、A社は田中さんが休職期間満了後も復職できそうにないなら解雇することに決め、田中さんにもそう通告していました。
すると田中さんは、休職期間が終わるギリギリになって会社に手紙を送ってきました。そこに同封されていたのは「重度のうつ状態。外出困難な状態が継続している」と書かれた精神科医の診断書です。
そして、数日後、田中さんは「私には働く気力があります」といった内容の手紙を会社に送ってきました。それは、ただの手紙ではなく、内容証明つきのものでした。
「なぜ重度のうつ状態で外出困難な人が内容証明付きの手紙を送ることができるのか?」という疑問もさることながら、それ以上に私が不思議に思ったのは、田中さんの通っていた精神科が彼の住む県の2つ隣の県にあったことです。
気になってその精神科医に連絡をとってみると「診断書は田中さんと電話で話をして、それをもとに書きました」という信じられない返事が返ってきました。
電話で話しただけで、患者さんが重度のうつ状態で外出困難かどうかなど、果たしてわかるのでしょうか。
私には、その精神科医が田中さんの言いなりになって、患者のリクエスト通りの診断書を書いたとしか思えませんでした。
一般の方にはちょっと信じられないかもしれませんが、このような精神科医がいるのはまぎれもない事実なのです。
(取り上げる事例は、個人を特定されないよう、実際の話を一部変更しています。もちろん、話を大げさにするなどの脚色は一切していません。また、事例に登場する人名はすべて仮名です。本記事は「あなたは“うつ”ではありません」を再構成しています)。
- 1
- 2